ワーケーションの定着に必須の新たな仕掛けづくりとは?

2021年3月14日

全国で高い関心を集ながらも、未だ一般企業からの幅広い支持を獲得しあぐねている「ワーケーション」。いったい何が企業にとっての足止めになっているのでしょうか。課題解決には、官民をはじめとした連携と新たな仕組みづくりが必要とされています。新たな働き方を提唱三菱総合研究所研究員の見解が注目されています。

政府が「ワーケーション」予算発表

(画像:ワーケーションは定着する? 企業の意識どう変わるか|NIKKEI STYLEより抜粋)

観光庁は、2021年度政府予算案として「ワーケーション」の普及・定着に約5億円を計上しました。リゾート地や温泉に滞在しながら、テレワークなどを活用して働くワーケーション。新型コロナウイルスの感染拡大を機に国や自治体の間で関心が高まっています。

三菱総合研究所による分析

「逆参勤交代」という名称で、17年から新たな働き方を提唱している三菱総合研究所では、地方の人口減の深刻さに目を向けつつ、江戸時代の参勤交代とは逆に、都市居住者が期間限定で滞在型リモートワーク(ワーケーションなど)をすることで関係人口が増え、地方創生も可能であるとしています。

ワーケーションに付きまとう「課題」

(画像:ワーケーションは定着する? 企業の意識どう変わるか|NIKKEI STYLEより抜粋)

一方、課題がないわけではありません。主席研究員の松田智生氏は、地方による足元の誘致合戦では、ワーケーションを一過性のブームに留めてしまう可能性があることを指摘しています。今のところワーケーションに熱心なのはIT(情報技術)系など一部の人たちのみ。限られたパイの争奪戦は不毛な結果を生むでしょう。現在問題になっているのは、ワーケーションに対する先入観。たとえば「バケーション」の側面を推すことにより『旅行の片手間に仕事』というイメージを喚起してしまうでしょう。そこで今後は、近年世界的にも関心を集めているSDGs(持続可能な開発目標)の観点からワーケーションを地域貢献へと結びつけるなど、新たなワーケーションの姿を打ち出すことで企業の腰を上げさせる必要があるのです。普及のカギは企業側の意識改革にあると言われています。

ワーケーション定着には効果の『見える化』が不可欠

ワーケーション(逆参勤交代)のもたらす利益とは?

松田氏によれば、ワーケーション(=逆参勤交代)は地方と企業、働く個人のそれぞれに利益をもたらす可能性を秘めているものです。

まず地方にとっての利益ですが、地方では人口が減ると経済において市場が縮小してしまいます。そこで、ワーケーションを実現することで都市居住者を受け入れて、消費が喚起されることが期待できるでしょう。首都圏と近畿圏にある大企業(従業員1000人以上)の社員は約1千万人いますが、たとえばその1割が1年間のうち1カ月をワーケーションに費やせば、消費額としては年間1千億円の市場を創出できるというわけです。滞在中の消費活動だけでなく、雇用面の利益もあり、例えばワーケーションを支えるためのオフィスや宿泊施設などでの雇用機会が向上するでしょう。このように、地方にとってワーケーションは都市とをつなぐ自律分散協調モデル。ネットワーク化によって外力を取り込み、地域の価値を最大化することができるのです。

次に企業にとっての利益について。これは経営上なかなか実感しづらい部分ではあるのですが、まずは健康経営の側面。社員のリフレッシュを図ることができ、ストレス解消に繋がれば、メンタルヘルス問題の減少にもつながりますし、長期的に社員の生産性も上がるでしょう。

最後に、もちろん働く個人への利益もあります。一番は、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現しやすくなることが挙げられるでしょう。自然の多い環境で働くことで心身のリフレッシュ、そして仕事のモチベーション向上が実現されますし、セカンドキャリアを目指すシニア層にとっては、ワーケーションを通して新たな出会いにも期待できるかもしれません。

バケーション型ワーケーションの限界と、次の「価値」

こうして述べたように、ワーケーションは地方と企業、個人の三方一両得を実現する働き方ではあるのですが、現状は未だそこに至らず…という課題があります。ワーケーションに対する一般的な認識は、「自然豊かな場所でパソコンに向かって仕事をこなす」といったものでしょう。もちろんそれだけでも気分的、身体的なリフレッシュや、国内インバウンドの一時回復へと貢献することは期待できます。しかし、そういう「バケーション型ワーケーション」のみでは需要は伸び悩み、波及効果も限られるでしょう。そこで、ワーケーションの特性を生かした仕組みが必要になります。松田氏は次のように述べています。

せっかく人が行き来するのですから、交流(コミュニケーション)、学び(エデュケーション)、貢献(コントリビューション)という『脱・バケーション型』を促す仕掛けが大切です。

(参考:ワーケーションは定着する? 企業の意識どう変わるか|NIKKEI STYLE

この仕組みは地方だけでなく、働く個人にとっても十分魅力を生むでしょう。たとえば、レンタルオフィスやホテルに閉じこもっているだけでは得られないインスピレーションを地方から受けることができ、地域の特産物の販売プロモーションの立案などに繋げることができる…といったようなケースが生まれることが想定されます。

交流、学び、貢献という『脱・バケーション型』の仕掛け。これこそが現在ワーケーションの抱える課題を解決する新たな価値を生むと言えるでしょう。

ワーケーションを一過性のブームとして終わらせないことの難しさ

働き方改革ではこれまでにもワーケーションの他に、プレミアムフライデーのような一過性のブームが起こっては消えてきた過去があります。現状ワーケーションも、多くの企業がそれに二の足を踏んでいることで分かるように、そのリスクを抱えていると言えるでしょう。コロナ禍でテレワークや働く場所の自由が広まりつつあるとはいえ、企業による就労管理では課題が積算しており、第一にリゾート地で本当に仕事になるのか、といった企業側の心配は根強くあります。そこで働く人も、同僚と離れて自分だけがリゾート地に赴くことは気兼ねするようです。このように、日本ではバケーション型のワーケーションは現在もハードルが高いままです。現在ワーケーションのメインの実施者であるフリーランスやベンチャー企業の勤務者などの一部のパイを奪い合うのではなく、一般企業を中心としたマスボリュームの巻き込みが必要なのは言うまでもありません。

ワーケーション定着に向けて必要なこと

ワーケーションを今後定着させるには、なによりも官民が連携したプラットフォーム構築」が必要だと松田氏は述べます。プラットフォームにより現状深い分断のある地方と都市間の情報格差を埋め、ワーケーションの費用対効果をデータをはじめとする「数字で」示すこと。大企業の経営幹部の約7割がワーケーション(逆参勤交代)に関心を持つ中、このように情報格差が解消され、その費用対効果が「見える化」されれば、今後ワーケーションが一気に広まる可能性も見えてきます。現在はコロナ禍が猛威を振るっていますが、収束後にはたとえば法人版『GoToトラベル』事業など、長期滞在型のワーケーション実施企業を支援する取り組みを考えても良さそうです。

ワーケーションについて、課題は確かに存在していますが、新たな仕掛けづくりを通して今後の可能性を切り開いていけたらよいですね。

■会社概要

会社名:株式会社三菱総合研究所
代表者:代表取締役社長 森崎孝
本社所在地:〒100-8141 東京都千代田区永田町二丁目10番3号
設立日:1970年(昭和45年)5月8日
URL:https://www.mri.co.jp/

 

■本件に関するお問い合わせ

三菱地所株式会社
三菱地所のワーケーション ポータルサイトWORK×ation Site 問い合わせフォーム:
https://workxation.mec.co.jp/inquiry/

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