ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を掛け合わせた造語のことであり、休暇先や地方でリフレッシュしながら仕事をおこなう、新時代の「働き方」もしくは「休暇のあり方」のことを指します。また、ワーケーションは「仕事型」と「休暇型」の2つに分類され、仕事と休暇を共存させる動きが各地で広がりを見せています。
ワーケーションの2分類「仕事型」か「休暇型」
働き方改革が叫ばれる昨今の日本社会。2020年7月29日に菅首相(当時、官房長官)が記者会見でワーケーションの普及に意欲を示すなど、政府機関をはじめとした各所でワーケーション導入の動きが広まりを見せています。
参照:ワーケーション普及に国が意欲
ワーケーションとは、仕事と休暇を融合させた「働き方」と「休暇の過ごし方」であり、休暇先だけでなく、地方などの帰省先や出張先・研修先でリラックスしながら仕事に取り組むことも含まれます。
ワーケーションは大きく分けて2種類に分類される。
「休暇型(旅行型)のワーケーション」と「仕事型のワーケーション」が存在します。
参照:ワーケーションが秘める多様な可能性-非日常な場所でのテレワークとしての
ワーケーションを考える
・休暇型(旅行型)のワーケーション
休暇型のワーケーションとは、社員一個人で休暇先を決め、現地で休暇をとりつつ仕事に励むものを指します。休暇型のワーケーションでは、帰省先や休暇先を自分で決めZoomなどオンラインコミュニケーションツールを活用して、リラックスした状態で仕事に励むことができることが特徴です。その反面、旅費や滞在費は自費であるため、会社の福利厚生ではなく、個人の休暇としての側面が大きいと言えます。また、休暇型のワーケーションは「休暇活用型のワーケーション」と「休暇非活用型のワーケーション」に種別できます。
休暇活用型のワーケーションは、長期休暇を取得しようとした際に、自身の業務に遅れが生じないようインターネット環境を通じて一定時間仕事に励むものを指します。
一方、休暇非活用型のワーケーションは、フリーランスやギグワーカーが定額居住サービスなどを活用しつつ、仕事を行いながら旅行をするという働き方です。
・仕事型のワーケーション
一方、仕事型のワーケーションとは、日常とは異なる環境に身を置くものの、仕事を主軸に置いたワーケーションのことを指します。仕事型のワーケーションも「集中型のワーケーション」と「交流型のワーケーション」に分けられます。
集中型のワーケーションは、日常とはかけ離れた空間で集中力と想像力を養いながら仕事に取り組むものを指します。別荘で読書や考え事をするなど、思考を深めるためにビルゲイツが実践しているThink Weekや複数人の開発者がホテルなどで滞在しつつ、集中的に開発をおこなう開発合宿が例に挙げられます。
また、交流型のワーケーションは、企業が社内制度として旅費や滞在費などを一部補助し、積極的に導入を進めているものです。たとえば、地方に設立したサテライトオフィスで、社員に仕事を行ってもらった後、地域のアクティビティなどを業務時間外で楽しんでもらう場合などが挙げられます。その他にも、出張や研修をリゾート地で行い、福利厚生の一環として、リラックスしながら現地の魅力を堪能してもらう場合もあり、仕事型のワーケーションでは、地域に根差した休暇の過ごし方を実現することができます。
休暇型のワーケーションで旅行を満喫
休暇型のワーケーションでは、旅行など休暇に重きを置いている一方、「せっかくの休みに仕事をしなければならない」ことに違和感を覚える人も多く、SNS上でワーケーションに関して物議が醸されています。しかしながら、海外と異なり日本企業の多くは、長期の休暇(ロングバケーション)を取得することができません。そのため、海外旅行で羽を伸ばす機会が少ないのではないでしょうか。休暇型のワーケーションは、休暇と仕事を両立させ充実した時間を過ごすための手段として活用が進んでいます。
2017年より日本航空では、休暇先で仕事ができる休暇型のワーケーションが導入されています。仕事の関係上、長期休暇の取得が難しい社員でも、海外旅行を満喫できることが最大の魅力であり、社員の間で休暇型のワーケーションを活用がなされています。日本航空のある社員は家族でイタリア旅行を企画していたところ、年末の忙しい時期に仕事をおこなえないため、支障をきたすのではないかと悩みを抱えていました。その後、その社員は休暇型のワーケーションを活用し、4時間のみ仕事に充てることでやるべき業務を片付けながら、2週間もの間イタリア旅行を満喫しました。休暇型のワーケーションでは、長期の休暇が取得することが難しい日本においても、長期の海外旅行を楽しむことができ、リフレッシュしながら並行して仕事もおこなえます。
参照:一番新しい働き方、ワーケーション「タイプ&企業別」賢い利用法ガイド
仕事型のワーケーションで地域に密着
一方、仕事型のワーケーションでは、地方の魅力を知り、地域に根差した働き方や暮らし方を実現できる点がメリットと言えます。野村総合研究所では、周囲が山々に囲まれ雄大な自然が魅力的な徳島県三好市で、仕事型のワーケーションが実施されています。2017年より年に3回ワーケーションの取り組み実施されており、約1カ月間に渡って社員が古民家を改装したサテライトオフィスで勤務をしています。社内で「キャンプ」と呼び親しまれているこのワーケーションでは、通勤ラッシュもないため7時から仕事をはじめ16時に終わるなど自由な働きが推奨されており、それ以外の時間はボルダリングなど社員同士で余暇が楽しまれています。
また、地域貢献の一環として、行職員向けのIT勉強会やITを活用した害獣対策など、三好市が抱えている特有の課題を解決するために協働するだけでなく、四国酒祭りなどのボランティアにも参加することで現地の住民との交流も活発におこなっています。仕事型のワーケーションでは、地域に根差した活動をおこなうことで、都市部と地方の人々との交流が育まれるため、地域活性化や地方創生も期待されています。また、地域活動をおこなう社員にとっても自身の強みを活かした貢献ができ、休暇を楽しむだけでなく、充実した時間を過ごせると言えます。
参照:デュアルライフ・二拠点生活[17] 都会のオフィスを離れ、徳島で働き・暮らす夏 “ワーケーション”で働き方改革を
ワーケーションは「休暇型のワーケーション」と「仕事型のワーケーション」に分けられますが、どちらも仕事と休暇を両立させることが主眼として置かれており、個人生活の充実を成し遂げられます。また、生産性の向上や地域創成など、個人だけでなく企業や地域にも多大なメリットを享受できます。ワーケーションの本質は、旅先だけでなく、地方や田舎でリラックスしながら、自由な働き方・生き方も実現することです。ワーケーション協会は、休みでも働けとならないようにワーケーションのプラットフォームとして、魅力をこれからも発信し続けたいと考えています。