パソナが取り組むワーケーションとは?企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性

2021年02月26日

近年急速に注目を集めている「ワーケーション」。先進的に制度導入している企業も中にはあるものの、大多数の企業ではいまだ十分に導入が進んでいるとはいいがたい状態です。その認識の実態について、初期からワーケーションの提供に前向きな姿勢をとってきたパソナグループが、その実態について明らかにしました。

 

今、「パソナJOB HUB」に聞きたい「ワーケーション」の実態


(画像:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイスより抜粋)
コロナ禍で人々の生活に変化が見られ、働き方も変わりつつあります。そんな中観光産業では「ワーケーション」への注目が高まるばかり。日本航空(JAL)をはじめ、先進的に制度導入している企業の事例もいくつか見られますが、それ以外の「大多数の企業」は、ワーケーションをどう見ているのでしょうか。企業への人材派遣事業を中核に成長してきたパソナグループは、2016年と早くからワーケーションに注目し、グループ会社のひとつ「パソナJOB HUB」においては2020年から本格的に事業化を進行しています。日常的に数多くの企業と接点がある同グループでは、ワーケーションについての率直な声や疑問を多く見ることができます。今回は、人事責任者へのアンケート結果やそれをうけての課題・取り組みなどについて、「パソナJOB HUB」の加藤遼氏に話を伺いました。

 

話し手「加藤遼」氏とは


(画像:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイスより抜粋)
お話を伺ったのは、パソナJOB HUBの加藤遼氏です。パソナグループの中でもワーケーションに中心となって取り組んでいる「パソナJOB HUB」。大手企業の役員・管理職経験者などを顧問として活用する「パソナ顧問ネットワーク」と、個人事業主やフリーランス向けプラットフォームを提供する「パソナJOB HUB」を統合して2019年に生まれた新会社です。加藤遼氏は、同社の事業開発部長兼ソーシャルイノベーション部長を務め、2016年よりワーケーションに着目し、パソナグループでの事業化に向けて長らく検討を行ってきました。

 

2011年の震災後「ワーキングツーリズム」に着目

パソナグループでは、ワーケーションが今のように話題をさらう頃よりはるかに前から、ワーキングツーリズムに着目してきたことが知られています。同グループにおいては、2011年の東日本大震災後より、東北の経済の活性化を目的として、東北の各地で複数の子会社を設立。加藤氏は、各社の設立のための一連の取り組みに奔走した一人でした。その子会社の一つが、2016年に設立された、「VISIT東北」。インバウンドをはじめとする観光関連事業を行う仙台市の企業でした。加藤氏は当時を振り返り、次のように振り返っています。

「東北を訪れる旅行者を受け入れる中で、現地に滞在しながら地域課題を考えたり、地域の会社の経営課題に関心を持つビジネスマンや起業家、フリーランスなどが多く見られた。そういう人たちが地域企業の経営陣に入ったり、事業を興すといった『ワーキングツーリズム』の可能性を探り始めた」

(参考:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイス
このような契機から生まれたのが、「旅するように働く」というコンセプトでの、地域の企業経営者と都心部の起業家やフリーランスらの「マッチング事業」、さらに都市部の企業人材が地域へと滞在しながら人材研修、開発合宿を行う「研修事業」でした。ワーケーションの定義=「休暇中に業務を行うこと」と捉えられることが多い一般的な事情と違い、パソナにとってワーケーションとは「休暇的な環境で仕事をすること」であるという点も先進的でした。したがって、既存のオフィスではなくその外部や地域へと足を延ばしてのビジネスや業務に重心を置いているのです。

 

データに表れる、人事部門の慎重な姿勢

加藤氏はまた、次のようにも離しています。

「最近はワーケーションについて、企業から相談を受けることが非常に増えている」

(参考:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイス
企業からの相談者は主に経営、事業、人事の3部門。各々で、期待感や捉え方はかなり異なるということです。
経営者の場合、既にワーケーションを実践しつつ、さらに広めるにはどうしたらいいかについての社会啓蒙といった目線が多く、事業部門の場合は人材育成や研修の新たなツールとしてワーケーションに興味を持つケースが多いです。対して、人事部門からは情報収集に対するニーズが突出しており、「ワーケーションという言葉をよく聞くが、制度導入には具体的にどんなリスクがあるのか」「他社はどう対応しているのか知りたい」という慎重な声が多く出ています。
このように、人事部門による慎重な姿勢を裏付けるデータの一つとして、日本CHO(チーフ・ヒューマン・オフィサー/最高人事責任者)協会が2021年2月に実施した「第3回 新型コロナウイルスの「働き方と人事への影響」に関するアンケート」が挙げられます。
こちらのアンケートでは「2021年中に取り組むべき(取り組みたい)新たなテーマや重点テーマ」として31項目が設けられ、最も回答の多かったものに「デジタル化による人事業務の革新(デジタルトランスフォーメーション)」、「タレントマネジメント」と続き、「ワーケーション」は最も優先度が低い結果となっています。

(画像:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイスより抜粋)
また、ワーケーションの制度導入のベースとなる「テレワークの生産性」についてもかなり渋い評価が浮き彫りになっています。「テレワークによる「生産性への影響」を、おおむねどのように評価していますか」という質問への回答では、「現時点では評価が分かれる」が33%と最多で、「どちらかと言えばマイナスの影響」25%、「マイナスの影響」4%と合わせて全体の約3割を占めています。対して「プラスの影響」は0%で「どちらかと言えばプラスの影響」も13%にとどまるなど、テレワークの生産性には懐疑的な見方が強いことが読み取れます。

(画像:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイスより抜粋)
これらの結果をうけて、加藤氏は、総合的にワーケーションは人事課題としてかなり低いと結論付けざるを得ないと指摘します。
また、次のように述べています。

「取り組むべき課題が多く、そこまで手が回らないという現状もある」
「テレワークフレンドリーな会社では、コロナ禍に関係なくワーケーションが行われているが、そうでない会社では従業員がなかなか一歩を踏み出せない。経営者や人事部門がどんなメッセージを発するかが、大きく影響する」

(参考:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイス

 

補足:日本CHO協会とは

日本CHO協会は、各企業の部課長クラスや担当役員などの人事責任者が集まる会員組織で、パソナが事務局を務めています。会員は約1300人を抱え、大手企業の部長クラスも多く加盟しており、ほぼ毎月様々なテーマでの会員向けアンケートを実施しています。

 

「ローカルパートナー」に寄せられる地域からの期待

パソナJOBHUBでは、今まで実証実験的に行ってきた事業を継続拡大した形で、人材育成・事業創造プログラム「JOB HUB WORKATION(ジョブハブ・ワーケーション)」の提供を2020年7月より開始しました。その具体的な取り組みのひとつとして、2021年1月に長野県塩尻市、鳥取県鳥取市、広島県三原市で行われた「アートワーケーション」があります。土日での開催でしたが、募集開始後定員は即満員。受け入れる地域に加え、個人のワーケーションへの関心も着実に高まっていると言えるでしょう。

 

「アートワーケーション」の実施後感

2021年1月に長野県塩尻市、鳥取県鳥取市、広島県三原市で行われた「アートワーケーション」。これら3地域では、都市部に住むアーティストが現地に滞在しながら作品を制作するプロジェクト「ANA meets ART“COM”」をANAホールディングスが実施。パソナJOBHUBは制作された作品の展示会を鑑賞しつつ、アーティストとの交流やワークショップを行うツアーを企画しました。当ツアーは緊急事態宣言の発令に伴って、リアルからオンラインへと切り替えられましたが、塩尻市では商工会議所、鳥取市では NPO法人学生人材バンク、三原市はNPO法人ミライディアがオンラインツアー受け入れの「ランド手配」を担当しました。パソナJOBHUBは「JOB HUB WORKATION」のローカルパートナーとしてこうした全国の地元企業・団体との連携の輪を広げており、連携数は2020年7月の21社から、2021年2月時点で30社に増加しています。
こうした事情の中で、ローカルパートナーに関する問い合わせは非常に増えてきています。加藤氏は次のように話します。

「ワーケーションに対する地域の期待感を肌で感じる。産業振興やまちづくりなど、地域のコアな課題解決に向けた手段と考える地域が増えてきたという印象がある」「興味を持っている個人が多いことを実感した」

(参考:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイス

 

「休暇」×「仕事」のイノベーション、企業にどう伝える?

ワーケーションに対する地域の熱量は、ローカルパートナーの増加やアートワーケーションへの申し込み状況などからも非常に高く、関心を持つ個人も着実に拡大しています。対して、制度を導入する側の企業の姿勢にかなりの「温度差」が感じられる現状。
加藤氏も、企業への「刺し方」を現在も模索しながら、次のように述べています。

「地域も個人も意欲は十分高まっている。やはり課題は企業をどう動かすか」

(参考:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイス
ワーケーションへの関心興味で企業側をどう惹きつけるかが課題です。
パソナJOB HUBでは、ワーケーションのテーマにおいて今後はデジタルトランスフォーメーション(DX)やSDGsなども取り上げる予定です。2021年は観光関連を含めて、さらに連携先企業の幅を広げ、企業に向けた認知を高める活動へも注力する意向を明らかにしています。
ワーケーションは、新たな仕組みが必要とされており、その普及には企業側の理解促進が必要不可欠といえるでしょう。一方日本各地では、新たな市場としてワーケーションに期待し、企業や働く人々を呼び込む動きも活発化している。こうした企業・地域間の温度差を埋めるべく、地域のアイデアや提案力が重要なポイントになりそうだ。

 

仕事×休暇→五感が開き、ネットワークが広がることで起きるイノベーション

加藤氏は、2015年にサンフランシスコでビジネス会議に出席した際自分に起こったイノベーションを指して次のように語ります。

「ツーリズムを通して地域課題に触れ、出会った人たちと新しいアイデアを生む経験がとても印象的だった」と加藤氏は振り返る。「仕事と休暇が融合することで五感が開き、新たなネットワークも広がる。そこからイノベーションが生まれる感覚を企業にもっと知ってほしい」

(参考:パソナが取り組むワーケーションとは? 企業と地域の温度差をつなぐ、課題と可能性を聞いてきた _ トラベルボイス
当時はAirbnbに1週間泊まり、ホストや同時期に滞在していたビジネスマン、移動で利用したUberドライバーなどと地域や社会課題について語り合い、それがきっかけでAirbnbとの業務提携に至っており、この経験こそ、加藤氏のワーケーションへの取り組みの大きなきっかけとなったひとつの出来事といえるでしょう。
 

■会社概要

会社名:株式会社パソナJOB HUB
代表者:髙木 元義
本社所在地:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング
設立日:2019年6月25日
URL:https://jobhub.co.jp/

■本件に関するお問い合わせ

トラベルボイス公式HP:https://www.travelvoice.jp/
ページ下部のコメント欄:https://www.travelvoice.jp/20210226-148238

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
PAGE TOP